- テーマ
-
第11回 膝のスポーツ傷害 - 機能評価とリハビリテーション -
- 実施日
-
平成25年 10月26日(土) 18:00〜21:00
- 会 場
- 講 師
-
小柳 磨毅(こやなぎ まき)
大阪電気通信大学 医療福祉工学部 理学療法学科 教授
日本高等学校野球連盟医科学委員
一般社団法人アスリートケア代表理事 - 講義概要
-
近年、膝前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament: ACL)再建術は、術式の改良に伴い、より早期の生物学的治癒、再建靱帯の再構築が期待されている。
ACL再建術後に最も難渋する合併症は、膝関節の屈曲拘縮である。拘縮の予防には、膝関節の安静を保持する時期から、二関節筋の短縮をできる限り防ぐ必要がある。さらに電気刺激装置や自動介助運動、体表からの吸引や圧迫によって、癒着や柔軟性の低下を生じ易い膝蓋上嚢や膝蓋下脂肪体などの被伸展性を維持する運動療法を実施する。こうした軟部組織の動態評価には、運動器の解像度が著しく向上した超音波画像診断装置が有用である。
一方、ACL再建術後に大腿四頭筋の強化を膝伸展域で行うと、収縮力が膝関節の前方剪断力を発生させる。前方剪断力は術後早期の脆弱な骨—移植腱—骨複合体に対して力学的ストレスを与え,移植腱の損傷や弛緩、骨孔への癒合不全を助長する可能性がある。そこで前方剪断力を制動しながら膝伸展筋を強化する運動療法として、腹臥位で下腿近位を支点とし、大腿後面から抵抗を加えた膝伸展運動を考案した。下腿遠位支点の膝伸展運動とのX線透視画像による比較から、近位支点は膝伸展15°位での脛骨の前方移動が制動され、かつ筋電図計測では大腿四頭筋に高い筋活動を認めた。さらに力学解析により、近位支点の膝伸展運動時には後方剪断力が作用することから、再建術後のより早期から膝伸展域で大腿四頭筋を安全かつ効果的に強化できる可能性が示唆された。講演ではこの他、後十字靱帯、内側側副靭帯損傷や半月板損傷についても実践している方法を紹介する。